こんにちは。
飯田橋のカウンセリングルーム、サードプレイスのナカヤマです。
以前、大学病院で働いていた時に、比較的大きな治療研究に関わることになりました。
といっても論文を執筆するのは国立の研究所のエライ先生で、私はその頃はじめたばかりのトラウマに焦点化した心理療法=PE、を実施する係員のような役割でした。
研究の大雑把なデザインはこうです。
まず大学病院のクリニックに通院中のPTSDの患者さんたちをランダムに二つのグループに分けます。
ひとつはTAUと呼ばれるグループ(TAUはTreatment As Usualの略で、従来通りの投薬と精神科医による精神療法を受ける、ということです)。
もう一つはPEと呼ばれるグループ(PEはProlonged Exposure(持続エクスポージャー療法)の略で、私たちのような訓練をうけたセラピストが担当する心理療法です)。
そのTAUグループとPEグループで、PTSDの改善の経過を3か月、6か月、1年にわたって測定するのです。
結果、TAUグループの症状は変化しなかった(つまり治らなかった)のに比べ、PEグループは大きな症状の改善が見られました。
実はTAUを担当していたのは大変に高名な精神科医で、当時、その先生の診察を受けるのに5時間待ちなどというのはざらだったのです。一方、PEを担当していた精神科医や臨床心理士はPEセラピストとしては(私を含め)コワッパセラピストといってもいいようなレベルで、この結果が発表されたときは、「(高名な)先生に勝ったー!やっほーい!」と冗談半分で喜んだものでした。
この結果をふりかえって言えるのは、当時PEを行ったセラピストたちが熟練した治療者ではなかったということで、かえって、このPEという心理療法の構造自体に治療効果があるということが浮き上がったのではないかということです。
つまり症状が改善したのはセラピストのおかげではなく、PEのおかげってことです。
この研究から数年たって今は、それをより強く確信しています。
実際、PEは人の自然治癒力について本当によく研究されて出来上がった心理療法です。
そして(誤解を恐れずに言ってしまいますが)、トラウマからの回復において大事なことは、治療者の腕、というよりは人間が生来もつ回復しようとする力が適切に引き出されることです。
一方でPEをはじめとしたトラウマ焦点化心理療法はその名前のものものしさもあり、なんだかこわい、と尻込みする人はいます。
でもこの研究の結果を知って、どう思いましたか?
PEに関する効果研究は本当にいっぱいあるので、またご紹介できると思います。
ではまた!
http://www.office-thirdplace.com/